群馬原告団、前橋地裁での第一審で、一部ながら勝訴!

以下、NHKニュースから引用します。

原発避難訴訟 国に初めて賠償命じる判決 前橋地裁
3月17日 16時21分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で群馬県に避難した人など130人余りが起こした裁判で、前橋地方裁判所は、「津波を事前に予測して事故を防ぐことはできた」として国と東京電力の責任を初めて認め、3800万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。原発事故の避難をめぐる全国の集団訴訟では今回が初めての判決で、今後の裁判に影響を与える可能性もあります。
この裁判は、原発事故の避難区域や福島県のそのほかの地域から群馬県に避難した人ら137人が生活の基盤を失うなど精神的な苦痛を受けたとして、国と東京電力に1人当たり1100万円、総額およそ15億円の慰謝料などを求めたものです。

17日の判決で前橋地方裁判所の原道子裁判長は、平成14年7月に政府の地震調査研究推進本部が発表した巨大地震の想定に基づいて、国と東京電力はその数か月後には巨大な津波が来ることを予測できたと指摘しました。

そのうえで、「東京電力が非常用の発電機を建屋の上の階に設けるなどの対策を行うことは容易で、国もこうした対策を講じるように命令する権限があり、事故を防ぐことは可能だった」として、国と東京電力の責任を初めて認め、3800万円余りの賠償を命じました。

原発事故をめぐり、全国の18の都道府県で1万2000人余りが起こしている集団訴訟では今回が初めての判決で、今後の裁判に影響を与える可能性もあります。
東京電力「対応を検討」
判決を受けて、東京電力は「原発事故により、福島県民の皆さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて、心からおわび申し上げます。今後、判決内容を精査し、対応を検討してまいります」とするコメントを出しました。
争点(1)東電の過失の有無
今回の裁判では、津波の予測をめぐって、東京電力に民法上の過失があったかどうかが争点の一つとなりました。

原告側は、津波は予測できたにもかかわらず、東京電力は原発事故を防ぐ必要な対策をとらなかった過失があると主張しています。その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」では、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で発生することが示されていたとしています。さらに平成18年に当時の原子力安全・保安院や電力会社が参加した勉強会で、福島第一原発については、14メートルを超える津波が来た場合、すべての電源を喪失する危険性があると示されていたとしています。こうしたことなどから、津波は予測できたにもかかわらず、東京電力は原発事故を防ぐ必要な対策をとらなかった過失があると主張しています。

一方、東京電力は、国の専門機関が地震のあとに、「想定された規模を大きく上回る地震と津波だった」と評価していることから、津波を予測し、対策を行うことは不可能であり、過失はなかったと主張しています。
争点(2)国の責任の有無
もう一つの争点が、国に責任があったかどうかをめぐるものでした。

原告側は、国も、東京電力と同様に平成14年に政府が発表した「長期評価」や、平成18年に国の原子力安全・保安院や電力会社が参加した勉強会の内容などをもとに津波を予測することはできたとしています。そのうえで、国は東京電力に対して、防潮堤を高くしたり、電源盤を高台に移したりするなど対策を指示する義務があり、原発事故の発生について責任を負わなければならないと主張しています。

一方、国は、平成14年の「長期評価」は、あくまで阪神・淡路大震災を受けた防災目的のもので、原子力施設を想定したものではなく、原告側が「津波は予測できた」とする主張については、原発事故の発生について具体的な想定や試算をしたものではないとしています。さらに、「具体的な安全対策を指示するべきだった」とする原告側の主張については、原子力発電所の具体的な設計の変更を指示することは、そもそも国の権限としては認められていなかったとしています。
争点(3)賠償額の妥当性
さらに、今回の裁判では、避難者に支払われている賠償額が妥当かどうかも争点となりました。

これまで東京電力は、国の審査会で示された指針に基づいて、避難指示区域の住民に1人当たり最大で1450万円を支払っているほか、自主避難した人には最大で大人に12万円、子どもと妊婦に72万円を賠償として支払っています。

原告側は、これらの賠償には、住み慣れた家や仕事を失ったり、転校を余儀なくされたりしたことによる精神的な苦痛は含まれていないとして、現在の賠償の枠組みでは十分ではないと主張しています。さらに、避難指示区域の住民も、自主避難した人も、同様に精神的な苦痛を受けており、区別はできないとしています。

一方、国と東京電力は、現在の賠償の枠組みで十分補償されていると主張しています。
争点(4)自主避難の妥当性
また今回の裁判では、避難指示区域外の住民の自主避難の妥当性も争点となりました。

原告側は、放射線の被ばくに安全な線量は存在しないという、平成19年の国際機関の勧告を引用して、当時、福島県に住んでいた人が健康被害を予防するために避難することは合理的だったと主張しています。そのうえで自主避難をした人がそれまでの人間関係を断ち切られるなどして受けた精神的な損害については、現在の賠償の枠組みでは補償されておらず、不十分だとしています。

それに対し、国と東京電力は、事故直後の混乱などから被ばくをおそれて避難することに一定の合理性は認められるとしていますが、避難指示区域内の住民と比べて精神的苦痛は少なく高額の賠償は認められないとしています。
賠償求める訴えは各地で
原発事故で被害を受けた人たちは、各地で賠償を求める訴えを起こしています。

6年前の福島第一原発の事故のあと、東京電力は、国の指針に基づいて福島県に住む人たちや県外に避難した人たちに賠償を行っていますが、裁判を通じて事故の責任を問う動きが広がっています。今回のように福島県から避難した人たちが、国や東京電力には対策を怠った責任があるとして賠償を求めている裁判のほか、福島県では、賠償に加え、放射線量を事故の前の状態に戻すよう求める裁判も起きています。

件数は次第に増え、国や弁護団などによりますと、全国の少なくとも18の都道府県で29件の裁判が起こされ、原告は1万2000人余りに上っています。去年2月には全国の集団訴訟の原告たちが全国規模の連絡会を結成し、それぞれの裁判の情報を共有するなど連携して被害の救済を求めています。

一方、国や東京電力は、事故を予測することはできなかったなどとして、各地の裁判で争っています。審理の進み方は異なっていますが、17日の判決以降、千葉地方裁判所や福島地方裁判所などでもことし中に判決が言い渡される見通しで、裁判所が今回のように原発事故の責任を認めるかどうか注目されます。

(以上、引用終了)

今回の判決は、群馬での訴訟という、全体の中の一部の、第一審で、しかも原告の主張を全面的に認めたものではありませんでした。

しかし、「国と東京電力に、責任あり」と認めたという点では、非常に重要な判決でした。

この判決に続き、さらに原告の主張の合理性を強く主張しながら、訴訟を各原告団は進めていきます。

また、今回の原告には含まれていない、様々な避難者・被害者の損害・苦痛についても、本会は一緒に考えていきたいと思います。

(文責 事務局 宍戸俊則)