8/23避難者統計再構築等を求め要請書提出と復興庁交渉

◎8月23日、「避難者数集計除外の決定を撤回し、避難当事者も参加して避難者統計を再構築してください」要請書を復興庁へ提出し、質疑・意見交換を1時間行いました。「避難の権利」を求める全国避難者の会、ひだんれん、避難の協同センターの共同行動です。

◎ 「復興庁が避難者統計を実質的に変更し、見かけ上の避難者を減らしている実態を明らかにして、今後の動きを牽制する」「支援を必要としている避難者がまだいるにもかかわらず、公的支援が縮小している現実を訴える」 というねらいで臨みました。
◎ 復興庁は懸念した通り議論をかみ合わせず気のない対応でしたが、参加メンバーの追及に加え、子ども・被災者支援議連の国会議員の方々の鋭いツッコミが後押ししてなかなか力強い交渉となりました。特に集計対象の定義を「帰還の意思があるもの」としていることを厳しく追及し、「(積極的に)帰還の意思を聞くようには言っていない」と言い訳せざるを得ない状況にまでは至りました。

◎中日新聞東京新聞は紙面と電子版、共同通信配信記事は福島民報や毎日新聞等にしっかり掲載されました。赤旗、民の声しんぶん、i 女のしんぶんにも掲載されました。報道関係は13名が参集、交渉もぶら下がりも主催者会見も熱心に取材していただきました。

〇要請書「避難者集計除外の決定を撤回し、避難当事者も参加して避難者統計を再構築してください」本文は下記に掲載、全文や復興庁回答、資料等を下記リンクで閲覧いただけます。
https://drive.google.com/drive/u/1/folders/1i6dMSCqMxjyi39cvjGldV3fuqjN1reNA?fbclid=IwAR1NWEXIIsZKh5xCRDN07mS1fyk84o99vrnVVB0TTXT5X_FDixkU7KdlxQg

◎  今回は「21~22年集計除外問題」の交渉でしたが、避難者統計について私たちの会から考えると、福島県以外からの避難者のことや、そもそも原発事故による避難者の集計が無い(「東日本大震災」という括りのまま)ことなど、事故後10年以上も放置され続けている根本問題が多くあります。
引き続き、 避難者の定義と統計の在り方について、避難者支援施策あるいは避難者の権利保障の基本になるテーマとして取り組んでいきます。

【令和4(2022年)6月14日の避難者集計除外の決定を撤回し
避難当事者も参加して避難者統計を再構築してください】

 令和4年(2022年)6月14日、復興庁は「全国の避難者数-福島県外避難者に係る所在確認結果-」を公表し、令和3年(2021年)3月に発送した文書(以下、「令和3年3月文書」)が不達となった避難者の中の8,327人について所在確認を行った結果、以下の者について「避難者数調査の集計範囲外」として、避難者数から順次除外していると発表しました(7月8日に世帯数修正、その他修正なし)。
〇避難者から除外された(または今後される)方
1.所在が確認できなかった方 2,897人
2.所在確認できたが登録市町村外へ転居された方 2,482人    (1.~4.計)6,604人
3.所在確認できたが帰還意思がない方 1,111人
4.所在確認できたが既に死亡された方 114人

この取り扱いにより、復興庁の避難者数調査で定義する(対象となる)避難者は「現在居住している市町村に届出をし、帰還意思を持つか、または帰還意思の有無を表明していない者」に限定されたことになります。私たちはこのような避難者統計の実質的変更は、公正・公平性を欠き、次のような問題があると考えます。
〇1.について
 今回の確認方法で所在確認できなかった者について、避難者から除外するのは早計である。避難元自治体の持っている情報などとも照合する等、さらに検証が必要である。
〇2.について
転居先で再度届出することで避難者数に再集計されるとしているが、除外された方に改めて避難者登録を求めても、有効な支援策が先細りしていく現状の中で非現実的であり実効性に乏しい。
〇3.について
原発事故とその放射能の影響で避難した当事者で、避難先で今も生活を続け帰還意思を持たなくなった場合でも、その多くが自らを「避難者」と自覚している。避難者登録を自らの意志で抹消できる仕組みは良いとしても、「帰還意思がない」と表明したことで国の判断により「もはや避難者ではない者」とされるのは、当事者の認識と乖離したものである。除外された者も希望すれば避難元市町村からの情報提供(定期郵便物)が得られるとして済まされる問題ではない。

 避難者統計は、避難者の現状を把握し必要な支援策を考えていく最もベースとなるものです。統計は現在行われている施策に限らず、これからの施策を考える基本となるべく、全体像を可能な限り網羅的に捉えるものでなければなりません。
 原発事故発生から11年半が経過した現在、「帰還意思のある避難者」か「その他(=避難者ではない者)」かの二者択一の統計では、もはや避難者の現状が把握できなくなっています。帰還された方々が「帰還者支援」の枠組みの中で必要な支援を受けるのであるとすれば、それ以外の方はすべて「避難者」として、所在確認の可不可や帰還意思の有無、定住進捗度合、亡くなられた方等の内訳をするなど、より現状に即した見直しが必要です。
 また、福島県内の避難者数について、福島県が復興公営住宅入居や住宅取得をした避難者を集計除外しているために、福島県集計と各市町村集計で3万人以上も食い違っていることは、何年も前から度々指摘されてきたところです。
 そもそも帰還意思を持つ避難者に支援策が偏重し、他の施策が乏しいことから全国避難者情報システムへの登録の意味が薄れ、避難者統計が空洞化していると言えます。このような状況下での今回の発表は、「令和3年3月文書は“不達者”を特定し、可能な限り抹消するために行った」と言われても仕方がありません。
 少なくとも復興庁は今回の避難者除外は元に戻し、避難者の定義を改め、避難者統計を当事者も参加して再構築してください。
  
2022年8月23日  「避難の権利」を求める全国避難者の会、ひだんれん、避難の協同センター