2016年11月8日 4団体 政府交渉記録 その2 

<災害救助法に基づく応急仮設住宅・みなし仮設住宅の無償供与継続と東京電力原子力災害被災者救済のための住宅保障を求める要望書>

2011年3月11日東日本大震災を引き金に東京電力福島第一原発の過酷事故が発生して、5年8ヶ月、私たち被災者は、大地震・津波、そして原発事故による放射能汚染という複合災害によって多くを喪い、苦難の中を生きてきました。私たちは、この大災害からいのちを守り、生活を再建することを望み、日々努力してきました。

汚染地に居住する者は、被曝からも生活破壊からも守られる権利があります。避難するかまたは留まるかの自己決定は、決して被曝か貧困かの選択を強いるものであってはなりません。「被曝なき居住」「貧困なき避難」は、私たちの生きる権利であり基本的な人権です。
しかし国は、早期避難指示解除、賠償打ち切り、区域外避難者への住宅無償提供打ち切り容認などの経済的復興優先政策は、人々に無用な被曝と分断をもたらし、さらなる困難を強いています。私たちはこれに強く抗議し、被災者の意志を無視してこのような政策を強行することをやめるよう強く求めるものです。

私たち原発事故被害者団体連絡会、原発被害者訴訟原告団全国連絡会、避難住宅問題連絡会、「避難の権利」を求める全国避難者の会は、東京電力福島第一原発事故により被害を受けた当事者団体として、以下の3項目を要望するとともに、国の見解と対応について以下質問をいたします。

この原子力災害をもたらした原子力政策を国策として推進してきた国として、また、国民の平和的生存の権利を保障する責務を負う国として、誠意ある回答を求めます。

要望項目
1、放射能汚染に関して、現状では、311前の状態に回復がなされていない。避難指示区域の内外にかかわらず、避難元の地域に帰れない避難者の存在とその正当性を認め、安心して避難を継続できるよう住宅を保障してほしい。放射能汚染のある地域住民に対しての居住による被曝リスクの補償を行ってほしい。

[質問]
①環境省の除染ガイドラインに沿って除染をしても、放射性物質が取り除けず、線量が下がらないケースが多発しているが、これについて、国はどのような対応をしているか。
②除染土を中間貯蔵施設へ運び出す計画とその進捗状況、および、作業者および周辺住民への運び出し作業に伴う被ばくリスク(主に吸入による内部被ばく)への対応について示されたい。
③山林除染の計画と進捗を報告いただきたい。
④福島原発から放出された放射性物質の累積量(ベクレル)を示されたい。また、現在、福島第一原発から放出されている放射性物質の量(1日当たり)を示されたい。
⑤国直轄の除染事業で回収した放射性物質の量(ベクレル)と保管状況を示されたい。
⑥福島県とその周辺海域が、原発事故発生前の状況に戻せる見込みが今後数年の間で具体的に存在するか? 存在する場合、その具体策とスケジュールを示されたい。
⑦直近の福島県の健康調査で、子どもの甲状腺がん(疑いを含む)が174人に達したと発表されている。この事実と福島原発事故による放射線被曝の関係をどう判断されているか。また、検査縮小の動きも表面化しているが、これに対する国の基本的な考えを明らかにされたい。
⑧大人の甲状腺がん、白血病など事故以後に多発している健康障害について、どの程度把握し、放射線被曝との関係をどのように捉えているか、見解を示されたい。
⑨除染廃棄物の仮置き場や仮設焼却場の状況をどう把握しているか。これが汚染拡散と被曝要因の一つになっていると考えているか。
⑩放射線被ばくと健康影響についての基本認識として、ICRPはじめ国際的な到達点となっているLNTモデルを国は採用していると考えてよいか? 採用しないとすれば、その根拠を示されたい。
⑪累積で100mSvに達しない成人被曝労働者に対しても労災認定は行なわれている。 しかし、福島原発事故では成人よりも感受性の高い子供も幼児も被曝している現状で、『100mSvを一度に被曝しない限り、健康被害はでない、または他の影響にまぎれて 確認できない』との見解は労災認定の現状と明らかに矛盾する。この見解を訂正するか。
⑫原子力災害対策特別措置法にもとづき発令された原子力緊急事態宣言について、以下についてご回答ください。
・原子力災害対策特別措置法第15条第15条第二項にもとづき公示された「緊急事態応急対策を実施すべき区域」
・原子力災害対策特別措置法第15条第15条第二項にもとづき公示された「原子力緊急事態の概要」
・同法第15条第四項にもとづき、原子力緊急事態が解除された区域

2、国と福島県だけで協議してきた、避難者への住宅無償供与終了とそれに代わる「新たな支援策」は、避難者の実態にそぐわず、避難者に再び大きな不安と苦難を強いるものとなっている。決して強行しないでください。